The Internetのミニチュア版を作る
こんにちは。CS学部教員のSOです。永久にループするかと心配した8月も、当然のように終わって9月になり、あっという間に冬の足音がすぐそこまで聞こえてくるようになってきました。
さて本日はCS学部の学生が週に1回、午後の3コマ(90分×3)を使って取り組む実験についてのお話をしたいと思います。「実験」というと白衣を着た人たちが、ビーカーや試験管を使って何やら怪しい薬品を混ぜ合わせる光景が目に浮かんでしまいますが、CS学部では主に機器を操作してデータを取ったり、コンピュータを使って目的の動作をするプログラムを作成したりします。
学生が行なう「実験」に似た言葉に「研究」がありますが、「実験」が正しい手順を追っていけば結果がある程度分かっている事柄について、その正しい手順を学び、結果を観測・観察するというもので、大学3年生までに取り組みます。一方、「研究」は、すでに分かっている知識をフルに活用して、未知の事柄や試みられていない応用を探るもので、大学4年生になると「卒業課題」として取り組みます。実りある「研究」を行なうために「実験」は大切な準備体操となるので、みんな真剣に取り組んでいます。
私は、ネットワーク関係の実験の1つで「インターネットの仕組みを知り、様々なネットワークサービスを実際に動かす」というテーマを担当しています。いま、このブログを読んでいる皆さんも、コンピュータや携帯電話がネットワークにつながって、ブログの内容が保存されているサーバからデータを取り出して、コンピュータ上の閲覧ソフト(ブラウザ)で表示しているわけです。そのネットワークは1つの大きなネットワークではなく、小規模で直接通信し合えるネットワークがたくさんあり、それらを相互に接続することによって地球規模の大きなネットワークを作り出しています。これが「インターネット (The Internet)」と呼ばれるものです。実験では、この地球規模のThe Internetを、大きめの机が28台並んでいる実験室内に半年をかけて作り上げていきます。
簡単に手順を紹介すると、2~3人でチームを作って、サーバとなるPCと自分たちのノートPCが直接接続されたネットワーク (LAN) をそれぞれのチームで構成します。サーバはLAN内のノートPCにいくつかのサービスを提供します。これだけではチーム間のLANは孤立しているので、この28個のLANを相互に接続します。LANとLANを接続するネットワーク機器は「ルータ」と呼ばれるもので、各チームでサーバとして使ったPCをルータとしても動作するように設定をします。そこまでいくと、あとは複数のLANの間で利用するネットワークサービスを設定することによって、メールを送り合ったり、ウェブサーバから情報を発信するということが可能になっていきます。普通はインターネットサービスプロバイダ (ISP) が提供するサービスを自分たちで構築していきます。そのほかに実験では、セキュリティの確保のために、サービスを設定する上で何が必要か、どのように設定するのか、設定した通りに動作しているかを確認するにはどうすればいいのか、などを学習します。
この半年の間に実験することは、地球規模のインターネットのほんの一部だけを構成しているにすぎません。しかし、実際のインターネットでも、全体を管理しているものはごくわずかで、小さなプログラムやデータが相互にうまく利用されて全体として動作する仕組みになっていて、この実験で培った知識はそのままインターネットの世界でも通用するのです。ちょっと面白いと思いませんか?
2009年10月28日 (水)
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