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「長い話になるよ」とT#Kは言った

こんにちは。CS学部で数学の講義を担当している亀井です。

私の専門は幾何学で、普段は図形について研究しています。と言うと、みなさんはどんな様子を想像するでしょうか?
コンピュータに向かって絵を描いている人?風船を膨らましたり縮めたりしている人?
みなさんは「図形を研究する」ということについて、うまく想像することができないかもしれません。

研究者は図形を調べるために、それらの中身を手術したり、押し潰したり、叩いて音を聴いたりします。そんな中で、私は主に図形が喋る言葉を理解することで、その形を調べています。

ということで、今回は「図形が喋る言葉」についてお話してみたいと思います。

Image001

図1の図形を見てください。円盤に穴が開いています(コンパクトディスクや50円玉を想像すると良いです)。
この図形に、点xから出て戻ってくる向きのついたループを描いて、このループに「a」という名前を付けます。ループはゴムのように伸び縮みできると考えます(図1-1と図1-2のループは同じものと見る、ということです)。
また、「a」と逆の向きがついたループには「A」という名前を付けます(図1-3)。さらに、「a」というループを二つ繋げてできる、二周回ったループは「aa」とすることにします(図1-4)。同様に「aaa」、「AAA」なども考えることができます。これらは全て、この図形が喋る「単語」だと思うことにします。

Image002

さて、唐突ですが、ちょっとループを手前に引き寄せてみましょう(図2)。もし、ループが図形の中での連続的な変形で手元に戻ってくるならば、そのようなループ達には「e」という名前を付けることにします。これは「empty(空)」の頭文字で、「なにも喋っていない」ことを意味します。
図1の例で名前を付けた「a」や「A」や「aa」は、引き寄せようとすると穴に引っかかって手元に戻ってきません。一方、「aA」は引き寄せると手元に戻ってくるので、「e」と同じループです(「aA = e」)。つまり、この図形は「aA」という単語は「喋れない」ことになります。

Image003 

図3―1は二次元球面と呼ばれる図形で、ボールの表面の形をしています(ビーチボールを想像すると良いです)。
この図形ではどんなループを描いても、引き寄せると引っかからずに戻ってきてしまいます。つまり、この図形は「e」しか喋れない(=なにも喋れない)、ということなのです。

図3-2は二次元トーラスと呼ばれる図形で、ドーナツの表面の形です(浮き輪を想像すると良いです)。
この図形には、「a」と「b」二方向にループを描くことができます。それらを組み合わせて、「ab」とか「aabA」とか「Abb」とか、複雑なループ(=複雑な単語)を作ることも出来ます。ちょっと注意が必要なのは「abAB」で、これは引き寄せると手元に戻ってくるので「e」になります(図を描いて考えてみましょう)。

Image004

こう考えていくと、図形には無口な奴からお喋りな奴までいろんなタイプが居ることがわかります(図4)。

今回は絵に描ける図形ばかり見てきましたが、ちょっと想像できないような高い次元の図形でも、これまでの例と同じように言葉を調べることが出来ます。
そして、彼らの言葉に詳しく耳を傾けると、図形の曲がり方や表面に出来る流れの様子など、形にまつわる様々なことを知ることができるのです。

そんなわけで、私は今夜もワイングラス片手に宇宙の言葉を聴いているのでした(これはウソ)。

CS学部教員 亀井 聡

2010年10月31日 (日)

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