この11月で愛車の走行距離が20万キロに達した. その時の記念に撮った走行距離計の写真が図1である. 購入したのは1992 [平成4] 年で, 新車で購入以来18年間この車を乗り続けていることになる. 部品, 特に電装品で入手の難しい物が出てきており購入時の状況を維持しづらくはなっているが, 整備点検さえ十分に行なえばまだ十年は使えそう (希望) で, 現在も往復約70 kmの通勤にほぼ毎日使っている.
図1 走行距離200,000 km達成を示す走行距離計の表示
私が最初に車を持ったのは1980年代の半ばで, この車が2台目である. その間ずっと, 部品故障によるトラブルなどはあったものの事故らしい事故は一度も経験せず, 事故を起こして人様に迷惑をかける様なことを全く経験せずに来ている. そのため自動車保険の保険料の割引率もこのところ上限の 60 % (20等級) に貼りついた状態で, 安全運転を続けても保険料がこれ以上安くならないところまで来ている. 何十年も保険料を払い続け既に十分に保険会社を儲けさせているので, もっと大幅に保険料を割り引いてくれても良さそうにと思っており, この点でチョット不満ではある.
無事故の話に戻す. 幸運の積み重ねだけではこの保険料 60 % 引きの現状は生まれなかったと思っている. 私の車がフェンダーミラー仕様である事が, この様に長期間安全運転を続けて来られた大きな理由の一つだと思っている. そこで今回はこの安全運転のお裾分けとして, このフェンダーミラーの利点について, 手元の資料に基づき同目的の車体外後写鏡 (アウターミラー) であるドアミラーと対比しながら述べたいと思う.
一般に
[1] 運転者の視線が車両進行方向から外れている時間が永いほど前方不注意での事故の可能性が大きくなるので, 運転者の視線移動量は小さいほど事故の発生確率が小さくなる.
[2] 運転者から視認可能な範囲が広いほど運転者が危険回避をし易い (認識できない危険は回避不可能) ので, 運転者の視野を妨害する要素 (ブラインド範囲) は小さいほど事故の発生確率が小さくなる.
[3] 幅ゼロの車両同士は有限幅の道路では絶対に衝突しないし幅が道路幅の半分を超える車両同士はすれ違いもできない (止まらずにすれ違おうとすると必ず衝突する) ので, 進行方向に対して車両の幅が小さいほど事故の発生確率は小さくなる.
なお, この車両の幅はカタログ等に記載のボディー全幅ではなく, 危険回避の意味から最大幅であるアウターミラー最外側間の距離を対象とするのが最も有意義と思われるので, 今回はこの値を用いる.
である. 安全を脅かす要因は他にも沢山あるが, 今回はこの3点 (多分安全上主要な) からフェンダーミラーとドアミラーの安全性を定量的に評価してみた結果を述べる.
図2と図3は私の愛車に関するメーカーの技術解説書[1] から撮った図に必要な追記を施したものである. 青で書いたものがフェンダイミラーに関する著者の追記部分で赤で書いたものがドアミラーに関する追記部分である. 白抜きの三角形は運転者が左右アウターミラーの中心位置を見る際の視線移動範囲を, 一点鎖線で囲まれた色塗りの部分はアウターミラーにより妨害されて運転席から視認できないブラインド範囲を, また破線はアウターミラー最外側の位置を, それぞれ示している. 運転者の頭の中心位置と思われる点を, 円および放射線の基準としている.
図2 上面図
図3 正面図
これらの図から分度器と定規で読み取ったデータが表1である. おそらく他の車種でも大差は無いと思うが, ドアミラー仕様の車ではフェンダーミラー仕様の車に比して, 同一車種で視線移動量が約2倍, ブラインド範囲が3倍以上, 実質の車体幅であるアウターミラー最外側距離が 5 % 増であることが判る. すなわちアウターミラーのトータルな安全性の程度を定量的に評価する関数としてこれらの値の積を用いると, 1.92 × 3.21 × 1.05 = 6.61 すなわち, フェンダーミラーの安全性がドアミラーの6倍以上となる. 今回は考慮に入れなかった多くの要因を含めても, 安全性に関するフェンダーミラーとドアミラーとの間に存在するこの明らかな優劣が逆転するとは考えられないので, 上述の 「フェンダーミラー仕様である事が長期間安全運転を続けて来られた大きな理由の一つ」 との私の思いは正しいものと信じる次第である.
表1 結果のまとめ
私が自動車の免許を取得した1970年代の初頭では, 乗用車のアウターミラーとしてフェンダーミラーだけが合法で, ドアミラーは暴走族等が非合法に装着しているだけだったと記憶している. 外車にも輸入時でのフェンダーミラーの取り付けが義務付けられていたと思う. その後何故かこの規制が徐々に緩和され, 1990年代にはドアミラーが主流となり, 現在フェンダーミラー仕様の乗用車は, タクシー用などの一部の車を除き作られなくなって来ている. 特注での取り付け (ドアミラーからの交換) さえ断るメーカー (ディーラー) もある.
本ブログを読んでフェンダーミラーの良さに気付き, 車を買い換える際などにフェンダーミラーを指定する人が増え, それに連れてメーカー等の対応も変わり結果として事故の減少につながることを願っている.
参考文献
[1] 富士重工(株): Legacy新型車解説書92-6 U2051A, p.8-11, 1992.
[以上]
CS教授 片倉寛