カナダで開催されたワークショップで発表しました
はじめまして,データ工学研究室の伊藤柊太です.現在,大学院のコンピュータサイエンス専攻の修士2年生です.2022年11月にカナダのナイアガラで開催されたABCSS2022@WI-IAT2022に参加し,幸運にもStudent Travel Awardを受賞できました.発表タイトルは「Visualization and Extraction of Important Structural Changes via Dynamic Hypergraph Embedding」(和訳:動的ハイパーグラフ埋め込みによる重要な構造変化の可視化と抽出)です.
グラフ理論と呼ばれる分野では,「モノ」と「モノ」の関係を表すグラフと呼ばれるデータ構造が研究されています.この分野で一般に扱われるグラフは,モノとモノの1対1の関係を表します.例えば,SNSにおけるユーザーのフォロー関係は1対1の関係を表します.このような関係を表すソーシャルネットワークは,グラフを用いてモデル化できます.
しかし,現実にはモノとモノの関係は1対1とは限りません.例えば,SNSのコミュニティ機能は任意の数のユーザーが1つのコミュニティに所属することができます[i].このような関係を表すにはどうすればよいでしょうか?実は,通常のグラフを一般化し,任意の数のモノの関係を表す「ハイパーグラフ」によってモデル化することができます.通常のグラフより表現力が高いハイパーグラフは,近年注目されています.図は,ハイパーグラフによってソーシャルネットワークをモデル化した例です.
ところで,実世界で観測される多くの関係は変化します.例えば,新たにコミュニティが作成されたり,あるいはコミュニティから脱退するユーザーが現れたりするかもしれません.このような変化は,動的ハイパーグラフによってモデル化することができます.
本ワークショップの発表では,動的ハイパーグラフの構造変化を可視化する手法について提案しました.ハイパーグラフの情報を行列形式で表す接続行列から関係の強さを数値化し,ハイパーグラフを円上に可視化します.動的ハイパーグラフの各時刻を同心円上の異なる半径に可視化することで,構造変化を捉えやすい可視化を実現しました.図は提案手法による可視化結果です.マーカーはユーザーを表し,マーカーの色はユーザーの所属するコミュニティから同様の趣味嗜好を持っていると推察されるユーザーのクラスターを表しています.半径が小さい円から大きい円にかけて,ハイパーグラフの構造が変化していく様を可視化しています.この図から,ピンク色のマーカーが徐々にクラスターを形成していることがわかります.
このワークショップは国際会議の一部であり,様々な国の参加者がいるため,発表は英語で行いました.私は英語が苦手なので,日本語で発表することより何倍も難しく感じました.さらに,私は海外渡航の経験がなかったので,買い物1つすることの難しさや食文化の違いなども感じました.英語によるコミュニケーションがうまくできないこともありましたが,その分うまくできたときはとても嬉しかったです.また,現地では似た分野の研究をしている学生や先生方と意見を交換することができました.このように,日本では得難い貴重な経験を通してたくさんのことを学ぶことができました.この記事を読んだ皆さんも,是非海外でなにか活動してみてください!きっと,日本での活動とは違うことを学べると思います!
[i] https://help.twitter.com/ja/using-twitter/communities など
2023年1月26日 (木)